アップルシード(原作:士郎正宗)
士郎正宗が1985年に発表したデビュー作を、『ピンポン』の曽利文彦プロデュース、『バブルガムクライシス』の荒牧伸志監督でアニメ化した作品です。発表された当時から、「ちょっと観てみたいなあ」なんて思っていたんですけど、なかなか観る機会に恵まれませんでした。が、無職で暇になったので、レンタルショップ「GEO」の月例半額日にあわせて(笑)借りてきました。
まあ、簡単に言うと「アニメ」ということになるのだけれど、この作品では、リアルな人間によるモーションキャプチャーを3D化したもので、いわゆる「アニメ」とは異なる奥深さのある映像を作り出しています。まあ、このようなフル3DCGだと、通常のアニメーションと比べるとかなり「ヌメッ」とした絵作りになるので、この辺は好き嫌いがあるところかもしれないです。リアルさを求めすぎて、逆にアニメーションの良さを失ってしまっている観もあります。ただ、やはり背景とかはものすごくキレイだし、スピード感のあるシーンではCG特有の表現を使うことができるので、かなり見応えがありました。最新技術の見本市、といった趣です。
『攻殻機動隊』のシリーズもそうだったけど、士郎正宗原作の作品にはかなり独特な世界観がありますので、その世界観にどれだけ共感できるかが、ある意味では作品の解釈とか感想に大きく関わってくるわけです(まあ、これは彼の作品だけではなく、アニメーション全体にいえることだと思うけど)。この作品のテーマは「人間の業の深さと原罪の償い方」といったところかな?かなりクリスチャンよりのテーマなのかもな(笑)。けども、日本のアニメーションが海外で「ジャパニメーション」なんて言い方をされて、かなり評価が高いのは、アニメーションの制作段階で作るこうした奥深い世界観によるところが大きいのだと思う。『AKIRA』、『機動戦士ガンダム』、『新世紀エヴァンゲリオン』、いずれも独特の深い世界観を、事前知識がなく観ても感じられるようなストーリー展開をしているし(エヴァはちょっとスノッブな感じが強いけどね)、やはりそれが日本のアニメーションの文化なのだろうと思う。「独特の世界観」をうまく表現している作品として、この『アップルシード』もまた、ただおっぱいがでかくて大きな目をした女の子が変な言葉をしゃべるような同人系アニメ(笑)とは、一線を画す作品だと思ってます。これらが「アニメ」という同じ枠で括られるのもいい加減どうかと思うしな…。
さて、ストーリーの方ですが、ネタバレを含むので、以下は注意して読んでくださいませ。
主人公デュナン・ナッツは、突然、兵器の軍団に襲われる。危機一髪、というところに、E.S.W.A.T.と呼ばれる兵士たちが現れ、彼女を「オリュンポス」と言われる世界へと連れて行く。オリュンポスは、人と人のクローンから生まれた「バイオロイド」が、その種の保存のためにコンピューターと人間の完全合議制によって共生する平和の都だった。
新人類として人工的に作り出されたバイオロイドは、怒りや愛情、生殖機能といった人間の生得的な感情・機能をコンピューターによって統制され、人間と共生できるようになっていたが、そのバイオロイドを驚異と感じる人間が軍部の中にいて、バイオロイドを管理するコンピューターに対してテロを仕掛ける。このテロにより、バイオロイドは延命措置を受けることができなくなってしまう。そのため、バイオロイドの生殖機能を復活させることがコンピューターによって決定される。が、その生殖機能の復活には、「アップルシード」と呼ばれるプログラムが必要だった。
E.S.W.A.T.の一員となったデュナンは、このアップルシードを求め、古い研究施設を捜査に行く。バイオロイドの全滅をもくろむ人間たちが彼らの行く手を阻む。その中で、デュナンはバイオロイドの誕生と「アップルシード」について、深く自分自身が関わっていることを知る…。