コッポラの『マリー・アントワネット』が公開になるっちゅーことで、最近はツヴァイクの『マリー・アントワネット』を読み直してみました。というか、映画公開にあわせて新訳が出ているので、新しく買ったんですが。
上下巻の2巻構成で、マリー・アントワネット(上)のほうは、若くしてフランス王太子(後のルイ16世)野本に嫁ぎ、放蕩の限りを尽くすところから革命前夜まで、『マリー・アントワネット(下)』のほうはフェルゼンとの恋愛から処刑まで、という流れです。ツヴァイク自身は伝記作家なので、架空のキャラクターで物語設定ということはせず、史実に忠実にアントワネットのことと綴っているのだけれど、ところどころに思い入れが入ってくるのか、突然トーンが変わって力説モードになったりして、けっこう読み応えがあります。「果たしてアントワネットはフェルゼンとヤったのか?」みたいなところで、「ヤってない派」のことをコテンパンにコキ落としたり(笑)。アントワネットの物語は『ヴェルサイユの薔薇』で有名だけど、あれはむろん創作なので史実と異なるところは存分にあるわけで、ツヴァイクの本はできるだけ史実に乗っ取った上で持論を展開していて、説得力を持って伝わってきます。
人間、甘やかされるとダメになるとはよく言ったもので、前半のアントワネットは同情の余地もないほど「世間知らずのお嬢様」。その人が徐々に母性に目覚め、自身の身が危険にさらされると同時に大きく変化していく人間性。そして悲劇的な最期。アントワネットの生涯はこの一言に尽きると思うのだけれど、史実・創作を含めて、世界史的にさまざまに語り継がれている彼女の物語は、何度読んでも楽しいです。